ミラノサローネ 2010(10) サランラップのカッター

ぼくの奥さんが日本で買ってくるものの一つに、サランラップがあります。イタリアで売っているサランラップはスパッと切れにくく、時としてカット部分が直線ではなくなります。残った料理を冷蔵庫にしまう為、この皿の直径に合わせて、この程度のサイズのサランラップを切ろうと思い、しかし、それが切れが悪いために微妙にカバーできないのはとても悔しい・・・・と。およそ、もう一度切りなおすのは不経済です。それで日本製のサランラップ、それもサランラップそのものというより、サランラップのケースです。あそこに装着されているカッターがよいというわけです。

以前、ミラノの刃物のセレクトショップ、ロレンツィのインタビューで書いたように、ヨーロッパにおける「切る」とは日本の刀のようにスパッときるのではなく、どちらかというと力で押切るところがあります。彼は「結局のところ、日本人は刃物の切れ味に多大なこだわりをもったからとしか言いようがないと思う。これはヨーロッパがもちきれなかったこだわりだったのだろう」と語ったのですが、このどうしようもない「こだわり」の部分が、サランラップにも表現されているのです。日本料理では厨房で全て切るが、西洋料理ではテーブルでカットするという場面の違い以上のものがあると、ロレンツィは説明してくれました。

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「どうしても出てくる日本らしさ」の一例です。少なくても、このサランラップにおいては、ナイフと違い、カッターは切れ味がよいにこしたことはないとぼくには思われます。したがって、仮に日本のサランラップをイタリアで売る場合、カッターは日本の味をキープし、パッケージをローカライズするのが妥当であるということになるでしょう。一方、日本の包丁はヌーヴェルキュジーヌのコックだけでなく家庭にも入り込んできていますが、まだ大きなマーケットにはなっていません。そこで、包丁のパッケージはローカライズしないことに意味があるでしょう。特別感や違和感があっていいのです。AKB48の世界と似た位置です。

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昨日、日経デザイン編集長のブログに花王の社長にインタビューした話が掲載されていました。花王は売り上げを海外市場に求め、海外比率を3割から5割にする計画のようです。ブログの書き方によれば、いわゆる新興国での市場開拓に力を入れるように読み取れます。

そのためには、メガブランドを軸にした統 一イメージの訴求とともに、国や地域によって異なる生活習慣や経済状況に細かく対応することが求められる。

こうした過程では、パッケージデザインの役割が重要になる。イメージの統一感を図りながら、サイズや素材などを個々に見直さなければならない。また、国内向けのパッケージで開発したエコデザインやユニバーサルデザインの応用も求められる。

しかし、エコデザインやユニバーサルデザインを導入した国内向けパッケージを、海外の新興市場などでそのまま使うことは難しいと、尾﨑社長は言う。理由は コスト。新興国市場を開拓するうえで、コスト競争力を高めることは不可欠。高品質の日本ブランドだからといって、日本国内と同等の価格では競争にならな い。あらゆる面で、コストダウンが求められる。

花王の日用品市場は電機業界でいえば白物家電の世界です。携帯電話のローカリゼーションはユーザーの地域文化より世代文化が優先されることがありますが、白物家電はユーザーの地域文化が尊重されるフィールドです。日本の全般的企業文化をグローバルなそれにしていくには、日用品と食品分野の海外市場の実績が有効に働きます。味の素やキッコーマンなどのローカリゼーションの苦労話が他の分野に生きるのです。ニンテンドーDSやソニーのPSの市場は、どこの国でも「イチ、ニー、サン」と声を出す空手や柔道の論理だといってよくーまたまたアイドル文化を中心とするコンテンツ業界もー、ここに線をひかないといけません。何度も書いているように、クルマもハイブリッドやEVと高級車では、受けいられる表現言語が違います。後者が地域文化重視です。花王の海外戦略が楽しみです。

ミラノサローネに出展するあなたは、あなたの発表する作品が、いわばローカリゼーションマップージャンルや製品の種類によってローカリゼーションの必要度が異なるーのどこに位置するジャンルなのか? それを明確にすることが大事です。

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Category ミラノサローネ2010 | Author 安西 洋之