僕自身の歴史を話します(24)ー品質が語るもの

一般的な話しからすると、このビトッシの皿でいう品質は利用品質でも機能品質でもありません。オブジェとして飾るか、その皿の上に果物を置くかです。そういった目的の製品で語られる品質は、機能製品の場合より難しい判断を迫られます。メトロクス東京の片岡氏は、こう語ります。「もし、イタリアに出かけ、その土地の景色や文化に感動し、その場でこの皿をみつけて買ったとします。そうした場合であれば、皿の裏がどうであろうと、あまり気にしないと思います。イタリアでは、製品の機能に問題ないのであれば、裏は関知せずという文化そのものを受け入れて買ったのだと思います。ストーリーがそこで完成しているんです」 「しかし、東京のデザインショップできれいに並べてあった場合、裏も気になるのですね。そこは、日本の文化が優先されるのです。例えば、我々が個人輸入で直接買い付けて、その入手までのストーリーを語って売るというのなら、きれいなディスプレイの上にあってもいいでしょう」

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もうひとつの例は、トリです。トリを支える棒を入れる穴をあけるのに、その穴の部分の粘土が穴の内側にひっかからず、そのまま下に落ちたものがありました。それがかけらとして音がします。カラカラと。片岡氏は「これはまったくの飾りなので、飾っている限り、その欠片は何の問題もありません。しかし、わざわざ振る人もいないのですが、置くときに瞬間的にその音がすることが、何か品質的に問題なのではないかという不安感を呼ぶのはまずいのです」と語ります。「これらの製品が工業製品だと思って買う人はいません。手作りだとは知っています。それでも、デザインショップで売る場合は、そのあたりの気配りが求められるのですね」とも説明します。

「また、そういうイタリアのゆるやかな文化を話しながら 、目の前のお客様に買っていただく場合は安心なのですが、オンラインで顔を合わせないでお客様に売る場合、特に神経を使います。不具合品と勘違いされるお客様がいないとも限りませんから」と聞いたとき、ぼくは二つのポイントがありそうだと思いました。ひとつは、商品の成り立ちから売る場所までを含めたストーリーを如何に作っておくか。もうひとつは、ビトッシ側で日本の市場の要求にマッチするように、「商品の仕分け」を更に徹底してもらうこと。つまり、ビトッシは、このトリのかけらの音を「幸運を呼ぶ音」として売ればよいだろうと冗談交じりで語ったのですが、日本でこれをジョークとして受け入れる土壌があるかどうか、その判断に片岡氏は迷うのでした。

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Category さまざまなデザイン, 僕自身の歴史を話します | Author 安西 洋之