メトロクスの旅(3) ポルトロノーヴァ

トスカーナの丘にあるアルティミーの朝は気持ちがよいですが、11月も半ばとあって観光客の姿は少ないです。初夏や初秋に来ると、色々な言葉が飛び交っていますが、この朝はイタリア人の出張者らしき人達しかいませんでした。このホテルには古典的な絵画がそこかしこに飾ってあります。ただ、3年前くらいからか、朝食をとるレストランの近くだけに、女性を描いた(最近の作品と思われる)絵画がかかりはじめました。色気がある気になる絵です。

pl1

11月は霧の季節です。晴れていれば、ホテルの前庭からフィレンツェの街もよ眺められますが、この日も霧です。ホテルから出発するときも、こんな感じでした。

pl2

今朝の行き先はプラートにあるポルトロノーヴァです。ソットサス、アウレンティ、ポルトゲージ、アルキズーム、スーパースタジオ、ホライン・・・とデザイナー達と輝かしい歴史を作ってきたメーカーですが危機に陥り、その後、建築を学んだ女性社長が継承しています。メローニの特注のガウン風ジャケットは素敵で、しかも裏地と眼鏡のフレームもオレンジ色なのがお洒落です。

pl3

pl4

ここでもビトッシと同じく、過去の膨大な歴史資料をどう生かしていくか、どうユーザーに語りかけていくか、これに腐心しています。栄光の歴史を知っている人には説明は不要ですが、それを知らない人達にどうコミュニケーションしていくかが課題です。時代が進めば進むほど、歴史の重さが増し、同時にそれをリアルに知らない人たちが増えていく、このジレンマです。名作には新しいヴァージョンを考えます。例えば、ロマッツィのジョーも一つです。白いソファです。

pl5

ただ、そういう過去に作った作品だけでなく、過去に使った手法で新しい試みを継続的に行っているのがすごいところです。それも社会的メッセージ性の高い作品を発表しています。下のチェアには現在、争いが起こっている世界の地名が記されています。アフリカやアジアなど・・・その椅子を軍服が覆っています。

pl6

あるいは、ホームレスの生活品一式をまとめたカート。家を失った人達も生活できるという深刻なテーマにやや微笑を誘う表現です。

pl7

かつての作品がそうだったように、若い人達に材料とチャンスを積極的に提供し、商業的に可能性がある提案がでてくれば、個別にロイヤリティ契約をしていきます。この方法のネガティブな面として「若い人達のアイデアを食い物にしてパブリシティを図っている」ということが言われますが、この厳しい経済状況のなかで、常にアイデアをアウトプットするメカニズムを維持しようとする精神的余裕をぼくはプラスに評価します。この心の余裕こそが、次代へ繋ぐ源泉であり、その余裕を失ったところからは希望が生まれない。率直にいえば、整理という言葉とはほど遠いポルトロノーヴァの社内ですが、過去と現在の混在がなんとも心地よい自由な空気があります。

pl8

なんでも取り仕切ってくれるフランチャスカの笑顔が、この自由さを物語ってくれています。

pl9

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

Category メトロクスのイタリアの旅 | Author 安西 洋之