世界の殆どの国は小国である

このブログのタイトルが「さまざまなデザイン」だから書くわけでもないのですが、生き方は人によってさまざまですから、社会や国のありようもさまざまであって良い。というより、「さまざまであるべきだ」という気持ちが強いです。最近、英国のケントに欧州他国の自己破産希望者が住み着くようになったといいます。なぜなら自己破産からのリカバリーが英国では圧倒的に早いー12ヶ月ーというのが理由で、何年も待たなくてよいのです。手っ取り早く自己破産して再生するに、大陸に近いケントに住むというわけです。また、病気の回復の見込みがたたず、自らに命を絶ちたいという英国人は、スイスに行きます。スイスでは自殺幇助が認められているのです。またドラッグ治療のためにドラッグを投与することをスイスは行ってきましたが、これは欧州各国から強い批判をうけながらも、独自の道を選びました。

フランスの外人部隊は他国での犯罪者さえも傭兵として採用します。ある国で生きれなくても、地球上のどこかに生きれる、または生き直せる場所があるというのは、人類にとってとても大事なことでしょう。もちろん犯罪者に逃げ道を常に用意すべきだというわけではなく、ある価値観が絶対的に地球全体を覆いつくすことはありえないし、そうすべきではないという意味で、これを書いています。逆にいえば、だからこそ、ある価値観を大義名分として自己を有利に持ち込むことが重要な戦略になるわけです。

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今年12月にコペンハーゲンで開催される国際環境会議で「京都議定書以降」がテーマになりますが、これに対して各国の準備が大幅に遅れているということをー特に米国を筆頭にーEUは強くアピールしています。環境政策はEUの十八番なのです。欧州委員会が定めた化学物質管理システムであるREACHや有害物質規制指令のRoHS指令はスウェーデン発の政策であるように、大義名分のより先端をいくことは市場を自ら作ることと意味します。日本のメーカーもEUのこれらの規制をクリアーしないとヨーロッパ市場でビジネスができないので、対応せざるを得ない。こうした価値と敷居でビジネスをする本家であることが、EUのブランド性を高めることになります。これもサバイバル戦略です。したがって環境問題は優れて政治的手腕が期待されるわけです。

スイスが脱税者保護に加担していると大国から批判をうけてきましたがーそして一部、スイスはその要求に折れ一部の預金口座情報を預金者の国に提供しましたがー、スイスでは脱税は違法ではないし、銀行法では銀行と預金者の関係を第一と定めており、口座情報が必要であれば国は銀行にではなく、預金者本人に聞くべきだとしてきたのです。スイスは大国相手に戦争を仕掛けても勝てるわけもないから、防御を中心として何とかやりくりして、結果的に平和であるという状況を作り出してきました。平和という概念のために中立を選んだのではなく、そうするしかなかったというのがスイスの正直な意見で、これはスウェーデンの中立も同じです。中立が一番有利と考えざるを得ないのです。

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スイスにとって重要な貿易パートナー特にスイスからの輸出ーである日本とFTAを締結し、この9月から発効しました。これが何を意味するかといえば、日本はスイスを経由すれば、スイスは既にEUとFTAがありますから、免税で日本の製品をEU諸国に輸出することができます(原産地証明が必要なので、それなりの「コツ」は必要でしょう)。これも小国ならではのサバイバルの知恵が発揮されている政策でしょう。そして、いうならば、世界の殆どの国は、このような知恵を使わないと生き残ることさえ難しい状況のなかで何とかやっていると認識すべきかと思います。

アゴラで北村氏の記事「日本は国連に過度の「幻想」を捨てるべき」を読みながら、以上のようなことを考えました。ぼくは小沢一郎のいう「国連」は言葉通りにとるべきではなく、米国の代わりに持ち出すものがないので「ましな存在」として言っているように思います。が、それはさておき、この記事のなかで氏は、日本の国連やスイスに対する幻想に警告を発しています。ぼくは、この警告は警告として意味をもつと思いますが、それらの組織や国のありようが、世の中にあるべき「混沌」ー混沌なき秩序はありえないーの一つとしてどこまで許容するのかという観点も、ぼく自身は強調しておきたいと思います。その点からすると、冒頭にあげた英国の自己破産法やスイスの自殺幇助など、いかに「さまざまであるべきか」は重要な論点になりうると思います。

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Category 『ヨーロッパの目 日本の目』, セミナー・講演など | Author 安西 洋之