「できない理由」を挙げるメンタリティ

7月に「電気自動車を作るのはやさしいか?」という記事を書きました。自動車開発の要諦は、かなり前から、ハンドリング性能や乗り心地あるいはインターフェースにあり、動力源そのものではなくなりつつあったはずです。それなのに、日本では、その手前で旧式の概念にとらわれ、電気自動車が「できない理由」ばかり挙げてきました。結果、世界のスピードから遅れを取っている。そのことへの危機感を書きました。

将来的に内燃機関から電気に動力が変わるだろうと長い間言われてきて、それでも四つのタイヤでボディを支えるという形は変わらないだろうとも言われてきま した。しかし、自動車会社の囲い込みなど色々な要因がありますが、電気自動車は常に「遠い存在」でした。それが一気に現実的なレベルになってきました。三 菱自動車のEVは普通の倍近い価格ということもあり、市場は実験的な匂いを感じていますが、中国では既に通常に近い価格の電気自動車も作られ、「あれが足 りない、これが足りない。だから主流にはならない」と批判しているうちに、世の中の趨勢は思ったより早く進んでいます。

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先日の米TIMEの記事にもありましたが、中国では固定電話というステップを踏まずに一気に携帯電話が普及したと同じことが、中国で自動車で起こる可能性が高いと指摘されています。ガソリンで400-500キロ/日走るライフスタイルがない、だから150-160キロ/チャージ走行が問題とならない。そもそも不便と便利を比較するベンチマークがなく、電気自動車が自動車市場開拓の牽引になるとすれば、次に来る時代ーそれも10年先ではなく、5年以内ーが、どのような状況となるかは予想がつきやすいでしょう。

これは従来の自動車大市場である、欧州、米国、日本だけを見ていてもわかりずらいことですが、現行価格の電気自動車が中国市場で爆発すれば、欧州各国などで目標としてあげられているEVを2020年までに市場の10%とするという数は、さほどチャレンジャブルではなくなってきます。つまり、世の中は周辺の変化に注意を払わないと見えてこないという例になります。

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さて話題は変わり、民主党の大勝を巡り、「民主党が成功しない理由」を鼻高々に語る向きが多くなっています。それは簡単には短期的実績は出ないかもしれませんが、「できない理由」「やらない理由」を羅列することに一生懸命になり過ぎるメンタリティは何とかならないものかと眺めています。「期待するからこそ」と但し書きをつけている人もいますが、どうも期待をもってしばらく静観するという態度がとれない人が多く残念です。これは上述した電気自動車への取り組みと全く同じです。

ぼくは、「ヨーロッパ文化部ノート」で、このような否定が先にくることを問題視していることを書きましたが、その底にある更に大きな問題点は、複眼思考の欠如です。この二つは表裏一体というべきかもしれず、複眼思考ができないがゆえに、「できる理由」が先にこないと言えます。英米紙の報道で新しい日本を不安視しているということを、日本のメディアは過剰に反応していますが、これも、英米紙しか読んでいないからこういう解釈になるのだろうと思います。アジア諸国紙のリファーも必要ですが、ヨーロッパ大陸の各国紙がどう書いているのかくらいは(少なくても)想像して「欧米」と語ってもらいたいものです。それでも、中東やアフリカあるいは南米は見えていません。これも、「周辺」と「複眼」がキーワードになります。そのあたりのイライラが、松本徹三氏のアゴラのブログにも出ているのだと思います

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そうした感想を抱いていたところ、9月9日付け政策研究大学院大学の黒川清氏のブログ、「民主党が衆院選圧勝、それから?」という記事を読みました。必要なもつべき寛容さを説いていると思います。「今まで自民党政権であらゆる過ちを見てきたのだから、とにかく、それに対しては罰を加え、また新しい政党の過ちを経験する」という部分を強調しています。その経験自身を自覚的に活用することが、一度は過去と似たような失敗に直面しても「かつて来た同じ道には行かないだろう」という精神的余裕がもてるのではないかとも考えます。逆にいえば、その余裕なしに、日本が何らかの存在感を世界に示すことにエネルギーを注ぐには至らないでしょう。

電気自動車と民主党政権の行方は、同じ精神構造の上に任されているのです。

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Category 『ヨーロッパの目 日本の目』, その他 | Author 安西 洋之