2008 ミラノサローネ(45):欧州文化ー4

欧州文化とは何かの最後の項目です。「多様性の維持」は、EUのポリシーに典型的に表現されています。EUでは実際に個々に話す言葉は英語やフランス語になっても、正式な会議では全て各国言語の通訳がつき、文書も翻訳されます。各々の文化の根幹をなす言語については、どの言語にも優勢性を与えることをしないわけです。膨大な費用になります。しかし、それを必要コストとみなしています。もともと様々な文化が共存する欧州ですが、ここで紹介したポリシーは、人々の感情を刺激しない工夫のひとつだと思います。

EUはその成立の背景に、もうお互いに戦争して疲弊するのはごめんだという悲痛な叫びと、米国や旧ソ連へ対抗する勢力圏を確立したいとの希望がありました。特にお互いの国民が好きでチームを組もうとしたのではありません。確かにフランス文化好きのドイツ人もイタリア人もいますが、それはごく一部の知識人であり、一般的に、何も具体的な異文化接触の経験がなければ、どの国民も他の国民を「変わった連中だ」としか思いません。そのような認識が根底にあります。だからこそ、それぞれの感情が平穏であるための方策が必要です。

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この多様性の維持が、そこで生み出されるコンセプトをより豊かで強靭なものにする遠因になります。即ち、(42)で書いた(論理的、地理的、時間的)連続性と多様性が交差することによって、色々なアングルからの仮説と検証をいやおうなしに迫られます。もし、欧州文化に何らかの深さを感じるなら、それはこうした必然性が背景にあることを考えるとよいでしょう。そして、欧州の人たちのために何かをデザインするなら、これらの要素に少しでも触れていると良いはずです。

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Category さまざまなデザイン, ミラノサローネ2008 | Author 安西 洋之