見田宗介『社会学入門ー人間と社会の未来』を読む

7月はじめに書いたエントリー「木村尚三郎『ヨーロッパ思索紀行』を読む」で、以下を書いたことがあります。

フィンランドの携帯電話機メーカー、ノキアのメッセージはConnecting People ですが、これは実に上手く現代と企業コンセプトを説明しているなと思っています。モバイル機器メーカーでこれほど印象に残るメッセージを送っている会社は他にないでしょう。先日紹介した宮台真司『日本の難点』でも書いていますが、技術革新が進み個々の孤立化が進めば進むほど、あるいは経済社会の効率化が進めば進むほど、それと同時に生活世界における密着性ー人の顔の見える関係ーがより重要になってきます。ノキアは、この時代の動きと自分のサービスコンセプトの両方のポイントをカバーしている点で優れているとぼくは考えました。

ここで言っている「人間の孤立化を招く」というのは、経済活動のユニットが重視されていくと、精神的な「孤立感」の問題が不可避的に出てくるということで、これをどう対処していくかが同時に考えられないといけない、これを無視した形態はありえないという点に強調ポイントがあります。そのポイントを、ある意味、現代社会の弱点をノキアはビジネスとして衝いているわけです。

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北ヨーロッパ社会と比較すると、南ヨーロッパはプリミティブな「共同体」「コミュニティ」が強く残っている地域で、これが経済の「アングロサクソン化」を阻害する要因になってきました。英誌『エコノミスト』は、このグレーな南ヨーロッパー特にイタリアの政治と社会ーを定期的に批判していますが、ぼくはこの『エコノミスト』の論調にいつも無理を感じています。やや、ヒステリックでさえあります。

実は、その英国がヨーロッパのなかで、社会問題に苦しんでいる「先進国」ー青少年のドラッグや飲酒の問題ーという側面があり、「社会問題の対大陸輸出国」となっています。実際、過去10年、英国から脱出する英国人が記録的に多かったという数字もあります(東欧に帰国した移民を含まない)が、これをサッチャー改革の負の面であると指摘する人は少なくありません。

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これまで社会のあり方を考えるモデルーすなわち人が幸せに生きれるーはほぼ同じで、それを色々な人が色々な表現をしているのですが、社会学の見田宗介さんの表現はノートに書き留めておく価値があります。

社会の理想的なあり方を構想する仕方には、原的に異なった二つの発想の様式がある。一方は、歓びと感動に充ちた生のあり方、関係のあり方を追及し、現実の内に実現することを目指すものである。一方は、人間が相互に他者として生きるということの現実から来る不幸や抑圧を、最小のものに止めるルールを明確化してゆこうとするものである。

前者は「関係の積極的な実質を創出する課題」であり、後者は「関係の消極的な形式を設定する課題」と集約しています。前者は、人類が滅亡して地球にただ一人残されたとき、それは実質的には死と等しいのではないかということです。しかし、他者は億劫で全ての悩みの源泉でさえあるのが、後者になります。もちろん、この二つは対立するのではなく、相互補完の関係にあります。

一方のない他方は空虚なものであり、他方のない一方は危険なものである。<中略> 他者が他者として、純粋に生きていることの意味や歓びの源泉である限りの他者は、その圏域を事実的に限定されている。これに対して、他者の両義性のうち、生きるということの困難と制約の源泉としての他者の圏域は、必ず社会の全域を覆うものである。

つまり、人生の歓びを味わうのは数の限られた社会のなかで可能ですが、しかし、ルールつくりは広いエリアで考えないと通用しないということです。「一国の内域的な社会の幸福を、他の大陸や、同じ大陸の他の諸地域の人々の不幸を帰結するような仕方で構想することはできない」のです。この圏域が二つの関係性のなかで、同一ではないというのが、重要な点です。

日曜日の衆院選の結果をうけ、池田信夫氏が、「世界的にみても、政党の主要な対立軸は「大きな政府か小さな政府か」しかありません。」と書き、大敗した自民党に「小さな政府」めざす政党として再生すべきだと提言しています。これからの民主党と自民党の深い議論に期待したいところですが、その際、この関係性の問題を圏域を含めて考察して欲しいものだと願っています。

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Category 本を読む | Author 安西 洋之

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  1. [...] This post was mentioned on Twitter by キルギシア人, キルギシア人. キルギシア人 said: 最小不幸の社会:一方は、人間が相互に他者として生きるということの現実から来る不幸や抑圧を、最小の [...]