二人のイタリア男の夏休み

「いや、去年の米国の金融経済の破綻は、いままでの形を全く変えたよ。これまで、コンピューターに全部計算式が入っていて、そこに顧客候補の個人データ、年齢や年収などをインプットしていけば、何年のローンが組めるかがすぐ分かり、どういう金融商品を売ればがいいか一発で分かったんだ。それにしたがって、クライアント候補にガンガンとアタックするという仕事だった、簡単にいうとね。それが用を足さないってことになったんだな、計算式が。お客さんも、あんな計算式を信じていると大変になるってことが分かった。で、お客さんはね、人を再び信用しはじめたんだ。自分のよく知っている人の紹介で話しをじっくり聞き、それで納得できたら、そこでリスクをとろうという態度に変わってきたんだ。これはすごいことだよ!」

目の前にいるイタリア人の親友がビールを飲みながら、こう語ります。プライベートバンクの人間として、これまでも抜群な営業成績を挙げてきた彼ですが、人間味溢れる彼にとって、一気に自分の価値が倍増したとでも言いたげな勢いです。ぼくもそう思います。「ゴールドマン・サックスは、この4-6月期にもすごい利益をあげたよね、政府にお金を返して。あれはどう読めばいいの?」と聞くと、「政府の現金を使って、いろいろと買い叩いたってとこかな。返せばいいってものじゃないよね。まあ、とにかくライバルがいないところで一人勝ちってところだ」。

sg

彼とはもう17年のつきあいになります。数年前、非常に重い病にかかり、半年以上、辛い治療の生活がありました。医者に完治したと言われた翌日、10メートルも歩けなかったというのですが、1週間後にはジム通いを復活させました。しかし、その半年が何かを変えたのか、2年後くらいに奥さんとは別れました。「去年、ギリシャに息子とバカンスに出かけたとき、ホテルのレストランのウエートレスが声をかけてきてね、夕食に誘われたんだよ。大学生の息子じゃなくて、ぼくがね。で、島を回るのに使っているバギーバイクでラフにホテルを出ると、彼女は真っ赤なドレスで、胸は露で、足もスリットがこんなところまで切れている服でビックリ仰天。だって、小さな島だよ。それでバギーバイクの後ろに乗って、走り回ると、村人が皆、見るわけだよ。バーっとドレスが後ろに飛んでね。恥ずかしいったらありゃあしない」なんて話しを振りをいれて面白おかしく喋るわけです。

とにかく最悪の事態だけは起こらないで欲しいと祈った半年でした。その友人が、このように元気になり、しかも金融経済が大打撃を受けたことを、自分のチャンスと受け止めている。とても励みにもなります。

もう一人は歯医者です。学生時代は政治活動にあけくれたらしく、今も自宅にはゲバラの絵がかかっていますが、毎年、夏は子供を連れて、あるいは一人でアフリカに行きます。約2週間、ザンビアなどに滞在し、ボランティアで歯科指導をしたり、実際に現地の人間の治療にあたります。「アフリカの人の歯っていうのはね、その歯茎の下に伸びる根が太くで長いんだ。強いんだね。でも、甘いものがいきわたり、子供なんか虫歯がすごく多いんだ」と語ります。マラリアなどの病気の危険がありながらも、現地の奥深くまで進んでいき、そこで歯の治療に励むという行為は、まず単純に頭が下がります。「まあ、治療室に普通の椅子はあるけど」とわざわざ付け加えるくらいですから、その環境が推測できます。

いろいろな夏休みがあります。たまには日常と違う時を過ごすことが、如何に大事か、二人のイタリア人の話しを聞いて思うことです。

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

Category その他 | Author 安西 洋之