ミラノサローネ 2009(48) 何に驚くか?

サローネ終了後、他の方のブログを読んでいます。建築家の芦沢啓治さんのブログに目が止まりました。日本語で書かれているかなり多くのブログが、トリエンナーレの「センスウェア」をべた褒めしているなかで、非常に醒めた目で見ています。これは貴重な意見なので下記、肝心な部分をペーストします。

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夕方からトリエンナーレへ。ここでの展示の中心はセンスウェアー、繊維企業と日本のデザイナーとのコラボレーションである。ビッグネームがうろうろ。企業のおえらいさんも、スーツをきめ、名刺交換している。まず、この会場にくらべデザイナーズブロックは、実に爽快な空間だということは述べておこう。

中庭では突如としてコンサートがおこなわれ、ビールをのみ、子供たちが戯れる。センスウェアーの展示は、非常に興味深いものであったけれど、僕が見たい何かではなかったから、わりとするっと見てしまった。そこでは、素材の可能性は感じたけれど、あくまでインスタレーションの域をこえるものではなかったし、それを商品にする、流通させるという射程をもったものではないから、どこか投槍な感じはいなめない。

驚いてねみたいな展示は、そうした素朴なものづくりに対する姿勢や知恵を感じることは難しい。そうした意味では、サテリテのような展示のほうがよっぽど刺激をうけたりするものだ。

ぼくは、日本の完成品メーカーが世界観を出せず苦労しているのに対し、素材メーカーは世界観を自ら出す必要がないため、このセンスウェアは良い意味でも悪い意味でも日本の産業力にあった展覧会であったと考え、そのよい意味で、ぼくは素材産業のあり方にエールを送りました。素材産業は結局のところ、大手製造業をクライアントにもたないとどうしようもないところがあり、家具や生活雑貨へのアピールは話題つくりにとどまりがちではないかと想像します。そのときに、こうしたアピールが、どれほどに更に大きな潜在的市場を掘り起こせるのか、つまり航空機あるいは自動車での拡大以外の道をもてるのか?に若干の疑問がないわけではありません。その点で芦沢さんの意見に頷きます。芦沢さんは、「何となくデザイン動向を掴もう」というのではなく、自分のデザインを欧州のメーカーに売り込むという目的がはっきりしているため、より目が厳しくなっています。こういう確固たる視点が大事だと思います。

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もう一点、ぼくが同意するのは、彼の「驚いてねみたいな展示」という部分以降です。モノそれだけを展示するのではなく、広義でのデザインをメッセージとして送るという位置づけであるにせよ、「空間を区切って真っ暗にしたり真っ白にして、先端インターフェースを試みればいいのか?」という疑問がぼくの頭の中でもぐるぐると回っています。どうもブランドコンセプトを伝達する方法として、あまりに代わり映えのない展覧会が多く、だからこそ、IKEAのイタリア20周年のプレゼンテーションがより光るのではないかと思います。「どうだ!すごいだろう!」と大見得切った空間は、先端インターフェースどころか、逆にインタラクションを拒否しているようにも見えます。すごく割り切った言い方をすると、「企業はお金に余裕のある時は空間を暗くし、予算に限りがでてくると空間を開放する」と皮肉の一つでも言われかねない傾向があるように思えます。何がコンセプトであり、何を理解して欲しいか?が明確である展示は、いずれにせよ好感をもたれます。この「好感をもたれる」ことに、もっと(特に西洋的文脈でのコンセプト構築に弱い日本企業は)力を費やしていいのではないかと思います。

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ぼくのサローネ見学記録をお読みいただければ分かるように、ぼくは「驚いてねみたいな展示」にはあまり熱心に足を運んでいません。ぼくの目的は「ミラノサローネでヨーロッパ文化動向を知る」ということですが、どちらかというと、やや人の少ない場所でデザイナーや企画者本人と話しながら理解することに時間を費やしました。ただ、ユーロルーチェのアルテミデやフロスのスタンドのように、かなりモノだけで人が熱心になる光景にも立ち会いました。

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Category ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之