ミラノサローネ 2009(47) 4月27日

日経ビジネスオンラインで川口盛之助さんの「家電も飛行機も下克上時代ー玩具メーカーの「所帯臭さ」が、「上位スライド」をもたらす」を読み、ミラノデザインの推移を想起しました。この記事では、ハイテクと玩具の距離が必然的に接近している現在、玩具(下)からハイテク(上)への玉突き現象が起きつつあることを指摘しています。そして、ポイントは人間との接点であり、そこで人間理解がキーになっていると言うのです。

何故、この流れがミラノデザインと近似かといえば、ミラノデザインとは伝統的に生活雑貨や家具が中心であり、カースタイリングをメインとするトリノデザインとは一線を画し、少なくても社会的文化的影響力でいえば、ミラノデザインが圧倒的な力を持つに至ったのです。トリノからすれば、ロイヤリティ契約の金額の小さなビジネスという印象があったミラノデザインだったにも関わらず・・・・です。そして、この要因に、生地とファッションをミラノデザイン側の味方につける、ライフスタイルとしてのデザインという流れもあったのは確かです。このライフスタイルを言い換えれば、人間への多面的アプローチをミラノデザインは資産として持ってきたのが、有利に働いているともいえます。

DSやWiiの任天堂が携帯電話に進出すれば、それは従来の地図からすれば産業の上下関係を崩すと見られがちですが、より人間に近いところで感覚的な要素を重視される分野が、そのノウハウを使って生活シーン全般まで商品領域を拡大するという見方をすべきです。卑近な言い方をすれば、女の子と付き合ったこともないハイテクおたくの男の子が、女の子の喜ぶケータイを作れるか?という疑問に答えが出てくる時代になってきたのです。

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ボヴィーザのトリエンナーレで学生の作品をみながら、考えました。上の写真のPCの周囲で話されている言葉が解析され、目の前の大きな画面に表示されてきて言葉のマップが作成され、天井からぶらさがる丸い球がマウス的な役割をします。こういうインターフェースの開発も、人間に合わせてくれない機械を苦手とするイタリアは、最初の頃は出遅れますが、生活雑貨レベルに技術を落とし込んでくれば抜群の力を発揮するのだろうなと思いました。人間の発意というのはタイミングが大事ですが、下の作品のストーリーを読むと、まさにそうです。

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Zerodisegnoのトップは、昨年のヴェネツィア建築ビエンナーレでGreg Lynnの作品をみてあまりに胸がときめき、米国との時差も考えず、その場からデザイナーに電話しました。それで実現したのが、リサイクルプラスチックを使用した三次元玩具です。Greg Lynnの金獅子賞受賞決定の前に電話したのです。自分でよいと思ったら、即動く。Zerodisegnoは、既にガエタノ・ペーシェやメンディーニと同様な作品を限定生産しています。以下はペーシェの椅子です。

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新しい都市や建築のあり方を形態から実験的に考えていこうというのがロッテルダムで活動するNao Haimで、彼女はある形のパターンをPCで作図したあと、壁の下にある不要な紙の束を使い印刷、そこでエレメントを作成していきます。それらを会場に来た人達がそれぞれのイメージで上の写真のようにモデルを作るワークショップをやっていました。ロンドンやケルンでも実施したようで、その時の写真も展示してありました。

上記とは全く関係ないプロジェクトで、この展示の横に、米国に難民として辿り着いた人たちがモーテルで暮らす様子を映したビデオがありました。マージナルな環境でさまざまな世界が映され、それは常に変動していく。これを見ながら、「ああ、そうか」と思い出したことがあります。先日のアートフェアでみた作品です。境界線を意味する英語、borderの複数形でborders という単語がミラーで表現されていました。

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このミラーに映っているのは、向い側にあるギャラリーの作品です。グリーンを使った作品が映っています。境界線でこそみえる動く現実を表しているこの作品が、まさしくこのトリエンナーレの場で、何かとても身近に力をもってきたような感じをもちました。そうすると、不思議なことに、Nao Haimのワークショップが、さらに重要に思えてきました。それは彼女がイスラエル生まれであるということとは関係なく、しかしながら、現代の問題で境界線上に立っている建築家であるのは確かではないか、そんな気がしたからでしょうか・・・。

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Category ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之