ミラノサローネ 2009(46) 4月25日

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前日サテリテでみた橋本潤さんの針金でできた椅子(上の写真の針金の椅子)のことを考えていました。昨年の「薄い椅子」(上の写真の白い椅子)よりインパクトがありました。なぜでしょう? ぼくは「ミラノサローネ2008」で、日本人デザイナーが軽さを意識せずとも出る軽さについて以下書きました

2008ミラノサローネ(32)で「欧州人が40なら、日本人は意識しなくても35という軽さを表現してしまう。こういうことがあります」「この差である5の行き場をどう考えるか、です」と書きました。あくまでも欧州市場で売るための前提で言うのですが、ぼくは35を40にあげていく発想では、難しいだろうと思います。日本人が得意とするカットしていく手法が使えません。あくまでも欧州の文脈に沿った形で、45から40へ、そして38あたりまで落とし込んでいくアプローチが必要なのではないかと思うのです。積み上げるのではなく、意図的により重いもの最初に選択し、それを軽くしていくというイメージです。

今回の作品には、それなりの「必要な」重さを感じるだけでなく(実際、2kg以下ですが)、より三次元的なのだと思います。ヨーロッパ人がある質を感じるには、重量感だけでなく、この「三次元性」があると思います。一般的に、日本らしさとは往々にして、日本の水墨画にある「平面性」に象徴されることがあります。それが日本好きのヨーロッパ人に「繊細さ」として評価されるわけですが、ヨーロッパ市場の傾向としてメジャーな嗜好ではないのは、「(必要以上の)軽さ」と同様です。三次元的ヴォリューム感がヨーロッパ市場では要求され、そのために日本人デザイナーは、3.5次元ー4次元あたりを意識的に狙わないといけないのでしょう。これらの二点、重量感と三次元性が、橋本さんの今回の作品が、昨年よりヨーロッパ人から良い反響を得たひとつの理由ではないかと考えました。

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そんなことを思いながら、トルトーナ地区へ向かいました。まず入ったのはIKEAです。IKEAがイタリア市場に入って20年。その歴史とIKEAの企業コンセプトが表現されています。とても上手いです。表面上はプレゼンにお金をかけていることが分からない、その徹底振りがIKEAらしいです。ストアマネージャーなどがエコロジーや社会的持続性の点から、いかに具体的な方策をとっているかをビデオで説明しますが、その言葉の一つ一つに実績に基づいた重みがあります。見ている人たちが、製品の素材や製法などそれぞれの背景を含めよく知っていていることが、耳に聞こえてくる会話ぶりから分かります。コンセプト構築方法とその伝え方、大いに参考にすべきです

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北欧各国がデザイン振興のために力を入れているのは周知の事実ですが、下はデンマークの政府がバックアップしているスペースです。

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また、次はフィンランドのメーカーですが、このスペースの外にはヘルシンキの学生たちの作品が展示されていました。伝統的な木の利用ばかりかと思えば、そうでもなく、学生たちはもっと広く通じる共通言語で勝負したいのだという意向が伺えます。

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ポルトローナフラウグループにあったメンディーニのチェアを紹介しておきます。メンディーニは他社で「1700年代」という作品を発表していましたが、これも同系統であり、 「ミラノサローネ 2009(41)」で「歴史の編集作業に入った」と書きましたが、これに関するぼくの考えは、この数日で翻ることはなく、より補強されつつあります

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トルトローナのこの人の集中ぶりで、パフォーマン的な宣伝活動も盛んで、モニターを抱えた彼もニコニコしていますが楽ではなさそうです。

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そんななか、ふっと上を向いて眺める空が息抜きです。

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夜、オフ会でサテリテや市内各所でご自分の作品を展示している日本人デザイナーたちと話しましたが、「日本では見る人はちょっと身を引いてみるんだけど、こっちでは積極的に踏み込んできて、いろいろとコメントはするし、説明すればするほど満足してくれるんですね」という皆さんに共通した言葉が印象的でした。ヨーロッパ文化部ノートに書いた、アーティストの廣瀬智央さんのローマでの展覧会の見方や反応と同じです

26日朝、日経デザイン編集長のブログ「デザインの雫」で以下の文章を読みました。

http://blog.nikkeibp.co.jp/nd/chief-editor/2009/04/202371.shtml

トヨタ自動車は、今回の展示のクリエーターとして、建築家の藤本壮介氏を選んだ。トヨタ自動車のデザイン部門がCADやCGを駆使して製作した Lexus実物大のアクリル製モックアップを、藤本氏がデザインした同じくアクリル製のベンチが取り囲む空間を仕立て、照明や音響をコントロールして日本らしい幽玄な展示を発表した。
実物大のモックアップは、エンジンなどのパーツも詳細に再現され、見る者を飽きさせない圧倒的な存在感を放つ。一方、水の流れを思わせる波紋を表現した藤本氏のベンチは、ゆらぎや陰影を漂わせる。アクリルという無機質な素材を使いながら、技術と感性という日本らしさを表現した。

ヨーロッパ人に理解してもらえるコンセプトとは何なのか?です。「日本らしさ」が表現されることが重要なのではなく、その「日本らしさ」のポイントが理解されることが重要なのです

あるコトやモノがちゃんと定着するには合理性が必要です。ロングセラー商品とは、必ずその合理性をもっています。ユーザビリティもそのひとつのキーです。寿司が西洋社会で定着しつつあるのは、ローカロリーが第一の理由であり、日本趣味ゆえではありません。トルコのケバブーは、米国発のファーストフードハンバーガーと比較して、「ファーストフードらしくない野菜の多いヘルシーさ」という合理性をもって、多くの人の「当たり前」の選択肢になっています。トルコがもつ異国情緒は、あくまでも付随要素です。「らしさ」ではない合理性をもっと見極めることで、レクサスのコンセプトがヨーロッパの人たちに理解されることになります。「日本らしさ」はコンセプトを作るものではなく、コンセプトにのせるものですIKEAは「質の高いデザインを低価格で、且つ環境や人を公正に扱う」ことをコンセプトとし、そのうえでスウェーデンを付加的価値として利用しています日本の完成品メーカーのコンセプトの作り方や世界観の示し方については、後日、さらに書いていきます

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Category ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之