ミラノサローネ 2009(45) 4月24日

今日はサローネ会場に行きました。クラシックやモダンはパスし、デザインのパディリオン。二階に上るとわりとすぐフィレンツェのビトッシのスタンドが目に入りました。今までモダンセクションだったのが、デザインに移動したので、人の入りが随分と違います。カリム・ラシッドの新作も発表していますが、前面はアイコン的存在のフォルナゼッティです。

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次は同じフロアにあるB-LINE。ジョエ・コロンボのボビーのメーカーとなって10年。初めてのサローネ出展です。1999年以前はビーエッフェというメーカーの生産でしたが、1999年、この会社で管理業務をやっていた一平社員、若きジョルジョ・ボールドィンが事業買収を試み独立したのがB-LINEです。その頃、ビーエッフェは経営が傾き、その危機を彼は「好機」として捕まえ、金型と商権を買い取ったのです。そして、今やボビーは5大陸30カ国に販路をもち、その他の商品系列も増やし、サローネデビューに至ったわけです。

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ぼくは2001年から彼と付き合っていますが、本当に細かいことを辛抱強くやってきました。下の写真は途中から経営に参画した彼のお兄さん。今年発表のコート掛けと10周年記念の黄色のボビーが見えます。

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その次に向ったのが照明部門のEuroluce ですが、LEDという起爆剤をもって新しい提案が実に多彩に行われています。80年代、ぼくが車の開発プロジェクトに関わっている頃、米国で装備が義務付けられたバックのストップライトでLEDが使われ、とても高価だった記憶があります。そのLEDが、この数年、照明業界では話題の中心にあるわけですが、アルテミデでみたザハ・ハディドの作品は、まさに流麗なスポーツカーを思い起こさせてくれました。

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デジタルゆえの有機的デザインであり、且つ木の根っこの部分が伸びてきたイメージがもとにあるようですが、ぼくにはクルマの世界を想起させるもので、このとき、ふっと思いました。スタイリッシュなクルマがやや遺物的に見られるかもしれない昨今においても、そのスタイリッシュさからくる未来的予感そのものは、かなり移りやすいものだろうなということです。今は過去の産物的にみられても、ある機会に、全く新鮮に見られる、ほんのちょっとした時代の空気で見方が変わる面白さと怖さがあります。メンフィスもそうかもしれません。

サテリテでは、booksのスタンドを訪ねました。昨年入賞した橋本潤さんと山本達雄さんは内田繁さんのところにいた元同僚ですが、二人でbooksというチームを組みました。橋本と山本にある二つの「本」という駄洒落のようなネーミングですが、お二人は夫々にチェアを出しています。橋本さんは昨年の薄い椅子とは違う、ヴォリューム感ありながら軽い作品をもってきました。

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針金だけで出来ているものです。マニアックな男心をくすぐります。だからか、男性の方たちに人気で、上の写真のように一生懸命に観察する方たちが後を絶ちません。橋本さんもやや緊張した面持ちで見ています。一方、山本さんは、鹿をモチーフにした椅子です。脚もそうだし、貼ってある生地の意匠だけでなく手触りまでが動物的です。それも親子鹿と小鹿までいます。

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これが女心を刺激するらしく、こちらのチェアは女の子が喜んでカメラを向けていきます。写真は角のあるお父さん鹿の椅子に座る山本さんです。

いつもサテリテを歩いて思うのですが、ここにはあまり完成度がいらないと思います。完成度の高さは目的ともあわず、その雰囲気とアンマッチでさえあります。デザイナーが主張したい何かが、一点集中型で表現されていればよいと思います。伊藤節さんも話していたように、ここで出来る人間関係でビジネスを探るのが目標であって、その作品自身を量産にそのまま結びつけたいというのは現実性の低い見込みとして考えるのが妥当です。その観点からすると、今回、booksの試みはとても割り切りがよかったのではないかと思います。

愛知県立芸術大学のスタンドが、あまりに日本的ムードだったので、学生さんに「これは日本のデザインを意識したのですか?」と聞いたら、「いや、全然、そんなこと考えていませんでした。でも、ここに設営してみたら、日本的だって気づきました。特に真正面はロシア勢なんで。外に出て初めて日本なんだって分かったんです」との答え。その経験が得られただけでも随分と今後違った視点がもてるだろうなと期待したいです。

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最後に。心地よさや健康がライフスタイルのコアとして定着してきましたが、フィットネス機器メーカーがサローネに出展するようになってそれなりの時が経過しました。最初はこうした風景に好奇心だけで人だかりができたものですが、最近は、ごく普通の視線でみる人が殆どです。風景が馴染んだだけでなく、コンセプト自身が根をおろしたというべきなのでしょう。これは一つのムーブメントのおこし方と波及の仕方として参考になる事例でしょう。

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Category ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之