ミラノサローネ 2009(35) サローネの見方ー2
Date:09/4/13
→ 文化の定義は?
「サローネの見方ー1」で文化的観点を重視すべきと書いたので、文化の定義をあらためて書いておきましょう。東京大学名誉教授(政治学、国際文化論)の平野健一郎さんが『国際文化論』(東京大学出版会)で説明している定義がぼくにはピッタリとくるので、そのまま使うと、「生きるための工夫」(designs for living) です。もう少し詳しくいうと「生活様式の体系」(a system of designs for living) となります。外面および内面の両面で、よりよく生きるためのあらゆる工夫が文化となります。サローネにシナリオをおけば、この作品が、人々が生きていくにあたって貢献してくれるのだろうか?ということがポイントになるわけです。
→ ミラノで中庭を探せ!
ライフスタイルそのもの、もっといえばライフスタイルの質そのものが、文化レベルを示しているわけです。それでミラノにサローネにやってきて、このライフスタイルなるものをどう見るか?ということが問題になります。サローネの会場であるミラノ見本市会場は、世界中どこにもある見本市会場と基本的に同じであり、ここでライフスタイルのリアリティを獲得するのは無理です。それでは街中を歩けばいいのか?ということになります。フオーリ・ディ・サローネは良いチャンスです。それも建物の裏側を見る絶好の機会です。即ち建物に囲まれた中庭空間を、この期間だけに限って覗くことができます。

もちろん、建物のなかの住居に入り、色々な社会階層の人と時を一緒に過ごさないと全貌は見えてきません。しかし、道路に面した建物の外見と綺麗さもあまりに違う、この中庭に身をおいてみることで、「外」と「内」の使い方が分かります。ものすごく魅惑的な空間に遭遇します。見本市会場で展示されている新作のソファーが、この中庭においても似合う、そういう視覚的経験を沢山するのが文化文脈の理解に役立つはずです。例えば、ゆっくりと流れる時のリズムを感じ、どうしてそのようなリズムが必要なのか、このリズムによってこそ見えてくるものが何なのか、そういう方面に思考を働かす契機が得られる可能性があります。あるいは、時の積み重ねのなかで、どこに基調層があり、どこに浮遊層があるのか、こういうことも見えてきます。要するに、文化の枠組みを知る一歩です。

→ ピアッツァの位置づけは?
イタリアに都市において広場(piazza)は客間として重要な位置を占めますが、気候が良くなると、こういった場所にバールやリストランテのテーブルが設けられます。ここにある椅子やテーブルは通常野外用です。室内用チェアやソファが、この類のスペースにおかれても非現実的であるばかりでなく、不釣合いかもしれません。野外を象徴的にいえば、公園にある水の飲み場がよいでしょうか。絶対壊されない材質と形で、しかも、水は出しっぱなしです。水の出を調整するようなヤワな機構を作りません。これが「外」の世界です。中庭が「外」ではないことが、明確になるはずです。だから、中庭を見れる時に見るべきです。

→サローネ会場に二日連続で行くな!
かといって、ぼくは見本市会場に足を運ぶことを否定しているわけではありません。新作の数々をできるだけ浴びるようにみるところしか見えないものがあります。しかし、二日連続して見本市会場に出かけても駄目だ、と言いたいのです。足を棒にして広い会場を巡り、重いカタログを集め、写真を取り巻くっている一日を過ごしたら、翌日は必ずフオーリ・ディ・サローネで、前日の会場での経験の相対化と自分の中での統合化に努める。この変化をつけることが貴重です。ディスプレイされた新作デザインを、少なくても自分の頭の中でも、文化リアリティの近いところに置いてみるのです。






