ミラノサローネ 2009(34)-サローネの見方ー1
Date:09/4/13
ミラノサローネ開幕もあと1週間ちょっとに迫ってきました。そこで、去年書いた「ミラノサローネ2008」や、今まで書いてきた「ミラノサローネ2009」を参照しながら、サローネの見方を何回か連続で書いてみましょう。
まず去年の内容を復習します。以下が目次化したものです。去年、最初からマニュアル的に考えたわけではないので、順番が前後しますが、要点をつかんでいくには役立つと思います。
第一章 サローネ見学のための準備運動
01 デザインの祭典
02 トレンドの海図をもつ
03 ワードを書く欧州人
04 バウハウスの再評価
05 時代を読み解く
06 村上隆『芸術起業論』
07 重さと軽さの表現
08 関係性を遊ぶ
09 記憶プロセスを考える
10 文章と口で説明する
11 モノ偏重を是正する
12 デザインの翻訳作業
13 文化全体の文脈をおさえる
14 ローコンテクストカルチャー対策
15 サローネで雑談を試みる
ここまでは、サローネを見るにあたって基礎的におさえておくべき点です。大きい枠組みでいえば、デザインを意匠などの狭義ではなく広義の定義でとらえるべきで、そのトレンドを見る場所としてサローネがあり、そういう観点でみた場合、文化文脈全体を把握する努力をしたほうがよいででしょうというのが第一点です。その時に必要なのが、コンセプトの理解の仕方であり、もっといえば、「コンセプトとは何か?」ということになります。これは、ぼくの「ヨーロッパ文化部ノート」でも今書いている内容ですが、「自分の見たものを如何に言語化するか?」に注意してください。多くの展示された作品は、そのもとに言語化された思考の構造があり、それをどう理解していくか、です。つまり、(日本文化文脈ではなく)西洋文化の文脈でのコンセプトを把握する努力を厭わないのが重要です。これが二点目です。
第二章 サローネで色々と見て感じる
16 仮説1「暖かい知性への道」
17 2010年からの戦略立案
18 仮説2「日本的デザインへの飽き」
19 深さを作るメカニズム
20 未来派バッラが問うもの
21 過去の名作との戦い
22 World Design Capital 2008
ここは昨年、サローネ開催中に書いた部分です。以上のなかで重要なアイテムは「深さをつくるメカニズム」かもしれません。よく「あの作品は浅い」「この作品は深い」という表現をします。実は、深いか浅いかは、上述したコンセプトの定義とも関わってくる問題ですが、とりあえずここでは「深さはデザイナーの才能ではなく、文化メカニズムによって作られる」ということを頭に入れておいでください。歴史的にものを考える、多様性を重視する文化が意図的に創られている、ターゲットとする市場が明確に可視化されている。これらが「深さ」を導きやすいのです。「未来派バッラが問うもの」は、文化全体のトレンドを察知するに、その時点で実施されている文化イベントを見ることに時間割くことをお勧めします。その一例として、ドゥオーモ横の王宮での開催されている展覧会があります。

第三章 サローネの後に考えること
23 レクサスのコンセプトの伝え方
24 二つの視点をもつ
25 アートと競うデザイン
26 思ったより売れない和食器
27 ミニマリストのこれから
28 欧州人から見られる日本デザイン
29 はじめにアウトプットありき
30 足踏みするコンテンツ産業
31 静かな日本デザイン
32 いまという時代の特質
33 発信力をつける
34 若手デザイナーの視線
35 コンセプトの重要性
この三章では、日本のデザインの見られ方を冷静に判断することがポイントだと思います。第一章でコンセプトの定義を西洋文化に沿った形で理解する重要性を書きましたが、要するに、日本人でありながら、ヨーロッパ人の視点をもつ工夫をしてみようということになります。日本の良さをヨーロッパ人にアピールしてヨーロッパ人に本当に理解してもらうには、発信側でデザイン言語を変換する必要があるだろうということに気づいてください。どんなに良いと自分で確信しているものでも、日本語が分からないヨーロッパ人を前に、日本語で喋り捲っても、仮に意気は通じても、それ以上には到達できない現実を知ることが大切です。もう一つの言い方をすれば、「何がユニバーサルであり、何かローカルであるか?」という問題意識を常に抱いて歩いてみるのがよいです。
第四章 欧州文化の見方を知る
36 欧州文化とはー1 連続性
37 欧州文化とはー2 コンテクストの存在
38 欧州文化とはー3 メインカルチャーへの敬意
39 欧州文化とはー4 多様性の維持
この四章では、「メインカルチャーへの敬意」を挙げておきましょう。東京でトレンドを掴むという時、往々にしてそれはサブカルチャーであったり、商業的な売れ筋情報になりがちです。行動パターンとしては、原宿や六本木あるいは秋葉原に出かけることであり、上野の美術館に出かけることにはなりにくいというという点です。それはメインカルチャーが社会的トレンドと乖離していることを意味します。しかし、ヨーロッパにおいて、メインカルチャーは厳然と目に見える姿で影響を与え続けていることを忘れてはならず、だからこそ、王宮で開催される展覧会を見てキュレーターの意図を推察することも重要だと思うのです。






