ミラノサローネ 2009(33) 伊藤節さんと語るー4

「いや、ほんとうにイタリア人は色々と新しいアイデアを出してきますよね。先日も、今、イタリア料理のシェフでは大人気のカルロ・クラッコの料理教室に招かれたんですよ。建築家としてね。どういうことかというと、キッチンメーカーが自社製品のプロモーションに建築家8人を呼び、そこでクラッコがスタッフも従えて料理を教えるんです。キッチンメーカーはそれで、建築家が製品に馴染みをもってもらえ、図面に入れてくれればと思うわけですが、こんなの初めての経験でした。いや、実際、クラッコも初めて使うキッチンだったので、随分戸惑ってましたけど・・・」と伊藤さんは笑いながら話します。実は、先週木曜日の放談は、これがスタートでした。

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そして、放談の後半で彼はこう言います。「ぼくもイタリアで20年近くやっているから、日本の人から、『伊藤はイタリアかぶれ』という批評のされることがあるんですね。確かに造形はイタリア的かもしれないけど、コンセプトはそうとうに日本的だと思っています」 ぼくが、その割合は7-3くらいですか?と質問すると、「いや、イタリアと日本のポーションは5-5でしょうね。そして、イタリア人は、ぼくのコンセプトにある日本的エッセンスを的確に嗅ぎ取ってくれることが多いのです」と語るのを聞き、ぼくは昨年「ミラノサローネ2008」で書いたことを思い出します

ぼくはヨーロッパ人は、美術館や展覧会の入り口で言語化された趣旨を読んで理解する習慣が強いことを書きました。一方、日本ではそういった趣旨の書かれた前にあまり人が集まらず、足は直線的に作品に向いがちです。直観的判断を優先するともいえます。さて、伊藤さんの作品の見られ方(あるいは読まれ方)を聞くと、イタリア人が異文化の本質に敏感であるというより、隠しようのない異文化に「気づく」のではないかとぼくは想像します。そこに民族性や国民性の差異はあまり出ないと思います。しかし、「コンセプトは何なのか?」ということを考える訓練の違いが、ここには出ているように思えます。作家本人と同じように5-5と判断することを目指す必要はまったくありませんが、やはりコンセプトを読む(あるいは読みきる)努力をすることは必要だと思います。直感判断のみに留まるのは、一種の思考停止であると思うべきでしょう。

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放談も最後にかかります。伊藤さんが数週間前にメールで「今は新たなヒューマニズム構築のときだと思います」と書かれていたことに対する質問です。

大学でバウハウスなどのモダニズムを勉強してきたが、日本文化の根底にある自然主義が身についていた人間にとって、イタリアでアルキミアに出会ったポストモダンで表現される西洋ヒューマニズムのあり方は、揺さぶられるような衝撃だったと言います。生産効率を度外視した詩的世界がそこにはありました。何より、そのエネルギーが凄かったと。そして、モダニズムの旗手であり「自然から形をみつけてくる」マンジャロッティのもとで、いわば正統派ヒューマニズムに接してきた彼が、東洋と西洋の新たな協調を主張しています。

ぼく自身は、西洋のヒューマニズムあるいは人間中心主義への疑問が世の中で盛んに語られていることが実際的に大きな局面をもつのは、エコロジー問題を並行して、アムネスティなどの人権活動と政治経済の折り合いや、表現の自由に宗教的侮蔑は含まれるかどうかが、実際の西欧圏とイスラム圏の衝突事件でどう発展していくか等によると思います。

いずれにせよ、伊藤さんの考えている方向には賛成です。東洋主義は新しいものを生み出しにくく、いわば下方向にベクトルがいきがちなところに弱点を見、新しいことを生む西洋の力と合致することが必要だと語る伊藤さんには、この文脈での全く新しい視点のデザイン(例えば、MADE IN ITALYやMADE IN JAPAN の新しい価値観)を提案されていくことを期待したいと思います。

<写真はRICHARD GINORIのZEN GARDENです>

*この連載でご紹介したデザインは、すべて今月のミラノサローネで発表される作品です。その他は伊藤さんのサイトトップページでご覧ください。

www.studioito.com

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Category さまざまなデザイン, ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之

Comment

  1. shiihashi 

    安西様、先程はブログにコメントありがとうございました。
    伊藤様ともお知り合いとは驚きました。
    2,3年お会いしていませんが、伊藤様によろしくお伝えください。

  2. 安西洋之 

    shiihashiさま

    ありがとうございます。

    経歴を拝見すると、設立当初のINTERSTUDIOにお勤めだったとありますが、ついでを申し上げると、ペザロの渡邊さんとも知り合いです。サローネあたりにおいでになるようですが、その頃、渡邊さんもミラノにおいでになる予定です。