ミラノサローネ 2009(29)-ピープルの求める人材
Date:09/3/30
先週と今週の二回に渡り、日経ビジネスオンラインで川口盛之助さんが、乳幼児玩具メーカーのピープルを取り上げています。今日の記事では、赤ん坊がパパの新聞をグシャグシャにして遊ぶ様子をヒントにした「赤ちゃん新聞」が紹介されています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20090325/190023/?P=4&ST=spc_fl
ごく普通の新聞のようなデザインの布切れで、記載されている内容は同社の商品ラインアップの紹介やユーザーの投稿記事などです。表裏の布地が縫い合わされた袋構造になっていますが、ミソはその間にサンドイッチされたセロファン状の薄いプラスチックフィルムです。
このフィルムのおかげで、触ると派手にグシャグシャ音が出て、手放すと元の形に戻ります。赤ちゃんは新聞やチラシのグシャグシャが大好きです。本能的な握り締めたいという衝動に加えて、お父さんが難しそうな表情で開いてはめくっている姿を見て真似してみたいと思う興味津々の日用品なのです。「まず手に取る→くしゃくしゃにする→口に入れて味わう→口の周り真っ黒」という事件はどこの家庭でも経験があるでしょう。
そして、記事はこの商品を生み出したピープルが社員に求める質と傾向を列挙しています。
(1)人間に興味がある人 → 道具感の根幹意識が人間理解
(2)センス頼みよりとことん考え尽くせる人 → 本質思考
(3)手足が先に動く人よりナゼナゼ?の穴に入り込む人 → 帰納的思考より演繹的思考
(4)観察力と嗅覚に価値を求める人 → 常時持っている仮説アンテナが高い
(5)商品ハードだけでなく広告や店頭販売まで総合的に仕様を捉える人 → 演出家の視点

ぼくは、これを読んでいて「そうだろうな」と思いながら、最近、読んだユーザビリティの黒須正明さんが書いた「文理融合」に関するコラムを思い出しました。特にインターフェース研究のおける「文理融合」は「人工協調(人間科学と工学の協調)」ということになりますが、工学系開発者が人間について人間科学系専門家に聞かざるを得ないことに何か無理を感じ、そもそも工学系の人間のタイプ、言ってみれば人間への関心度という面(上記の1)が大きな鍵なのだろうと考えます。
http://www.usability.gr.jp/lecture/20090305.html
文理融合という表現は、正確には「人工融合」というべきだ、と考えられる。工学で何かを作ろうとする場合、それが人間に関係している場合には、人間に関係した科学的知見が求められる、ということだ。
まずプロジェクトの目標としている開発に関連した知見を、人間科学系の研究者が既存の知識のなかから持ち出してきて、それを解説する。ああ、人間はそういうことがあるのか、それならばこういう風に作らなければならないだろう。工学系の研究者はそう考えて、アイデアをひねる。
黒須さんは、結局、文系の人間は工学系の人間の「使用人」という立場であることが多いと、実に示唆的なことを指摘しています。幼児向玩具とインターフェース研究という違う分野ですが、川口さんは、今週の記事の冒頭に、玩具の世界について以下のように書いています。
大人界で注目の「みんなで鍛える全脳トレーニング(脳トレ)」や「∞(無限)プチプチ」などの設計思想が何年も前から開拓されてきたこの業界。「Wii」や「iPod」などで話題の直感操作も、当たり前のようにずっと以前からこなしてきており、ある意味ユーザー・インターフェースの最先端を開拓する業界でした。
一人の人間の総合力ということを考えさせてくれる事例です。ぼくは比喩の一つとして、「女の子とつきあったことのない男の子に、インターフェースの開発なんてできるのか?」ということがあるのですが、どうも女の子より赤ん坊のほうが手ごわそうです・・・。






