ミラノサローネ 2009(23)-バイオリンを作るー1
Date:09/3/20
刃物のロレンツィのことを書いてから、「切れ味のこだわり」という問題が頭にこびりついています。今日、たまたまバイオリン職人の友人が遊びに来たので、刃物ユーザーの意見を色々と聞いてみました。彼は茅根健さんといい、今はベルリンの工房で働いています。去年の初め頃まではイタリアで4年ほど仕事をしていたのですが、新作より修理の仕事をもっと覚えたいと、アムステルダム、ハンブルグ、ミュンヘン、ベルリンと各地の工房で修行中です。

彼の経験によれば、弦楽器職人の世界では、日本よりヨーロッパのほうが「切れ味のこだわり」が強いと思うとのことです。楽器職人は基本的に刃は自分で出して研ぐのですが、マウロ・ロレンツィ氏が語ったように、ヨーロッパの職人のほうがナイフを用途別にもち、平均10-15本持ちます。日本では2-3本で全てをこなすことが多く、茅根健さんが誇張して表現するところでは、「ナイフ一本で全てやれてナンボ」という精神論的な部分が日本は強いかもしれなく、彼自身は沢山の種類をもったほうが合理的だと思っています。
そこで、イタリアとドイツのナイフの使い方の違いを聞いてみました。「ドイツはカーブや丸みを出すのにナイフを使いますが、イタリアではヤスリを多用しますね。結果として、ナイフのほうがヤスリのように木の繊維をつぶさないというメリットがあるんですが、イタリア人はシャープなラインはナイフでは無理と言うのですよ。一方、日本人もそうですが、ドイツ人やオランダ人は、ヤスリはナイフが使えない奴が使うもんだ、という考え方をするんですね」と語ります。「そして、ナイフのほうが一見、作業に時間がかかるように思えるがそうじゃない、とドイツの職人は言います」
*3月21日訂正:上記について「シャープなラインが出せるのはナイフの方で、ヤスリではナイフで出せない線の柔らかさ、丸み、暖かみです」という茅根さんの指摘がありました。イタリア人の職人は、柔らかさ、丸み、暖かさという要素を重視するわけですね。

そこで、ぼくがまた質問です。「以前、イタリア人のほうが、カーブや全体的なバランスの美しさの実現に関して圧倒的に優秀で、トップレベルは別としてドイツ人の平均値は低いといってたよね。それはナイフに拘るのと関係あるの?」 彼は「う~ん、難しいですねぇ。ドイツの職人はイタリア人より細部への拘りが強いのは確かですが、ナイフとの関係についていうと、どうかなぁ。確かにカーブに対する美的感覚の違いはありますからね」と答えてくれます。「ぼくが作った新作をドイツ人に見せると、『イタリアンだね。とってもいいけど、これはドイツでは売りにくいね』と言われるんですよ」
この最後の部分は美的感覚の問題なのか、それとも別の問題なのか。この次に書きましょう。







[...] This post was mentioned on Twitter by TetsutaroNakabayashi, 安西洋之. 安西洋之 said: 楽器職人は基本的に刃は自分で出して研ぐが、ヨーロッパの職人のほうがナイフを用途別にもち、平均10-15本 [...]