ミラノサローネ 2009(22)-ロレンツィ氏が語るー4

お店はモンテナポレオーネ通りに面していますが、実は奥に普通一般には公開していない博物館があります。それは髭を剃る安全剃刀のコレクションです。刃物は男の文化だとマウロ・ロレンツィ氏語り、そこに何らかの攻撃的な暴力的な匂いを感じるからではないかと想像します。実際、子供が店にきて喜ぶのは男の子が多く、女の子はあまり関心を示さず、示したとしても鋏だといいます。しかし、髭剃りとなれば、これは完全に男の世界です。この連載の初回で紹介した写真も、この博物館のものです。18世紀なかば、フランスで初めて生まれた髭用の安全剃刀で、その使用法がスケッチで描かれています。皮膚を間違って切っても、深くいかないようなシステムが、この時代に開発されたわけです。

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ここには紀元前のエトルスク時代の剃刀も保有しており、約4千点のコレクションがあります。安全剃刀は19世紀半ばの産業革命後、大きく発展したようで、驚くのは1900年代前半に既に5枚刃の剃刀があったことです。しかしながら、ものすごく高価で一般に普及するような代物ではなかったのです。いや、5枚刃に限らず、この安全剃刀は一部の階級に限られて使用されていたようです。実際の剃刀だけではなく、ポスターや剃刀の商品箱もガラスケースの上に見られます。

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刃物を如何に愛しているか、これらのコレクションの数々をみてもよく感じることができます。刃物の経験、レベルの高いお客さん、優れた職人、これらの組み合わせが、一つの確固とした世界を築き上げ、それがビジネスとして回っていくのです。イタリア人は哲学を語るのがおおむね好きですが、その哲学と実践に乖離があることも当然よくあることです。しかし、このマウロ・ロレンツィ氏と話していて、「このメッセージ力があれば、必ず商品も売れるだろう」という気持ちになります。メッセージをどう伝えるか、このお店でヒントを得ることは多いでしょう。一言でいえば、ここには全てがあります。全てがコンパクトに小気味良くまとまっています。ミラノサローネのとき、少し時間をあけて、「実践的クラシックの世界」を味わうことをお勧めします。

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Category さまざまなデザイン, ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之