ミラノサローネ 2009(19)-ロレンツィ氏が語るー1

ぼくはイタリアに来てから、ワイシャツはトリノの決まった店で買ってきました。中心街にあるその店は裏に工房があり、全てオリジナルブランドです。色も生地もよいだけでなく、痛んだ襟や袖を交換してくれるのです。およそシャツは、襟や袖が傷んでも他の部分は全く問題ないことが普通ですから、この方法はすごく合理的で気に入っていました。ですから14年前にトリノからミラノに引っ越しても、トリノに行く機会がある時、新しいシャツを購入し、痛んだシャツの修理を依頼してきました。そして、出来上がると宅急便で送ってもらいました。

しかし、トリノとミラノは120キロは離れています。そう用事もないと、シャツだけのためにトリノに出かける正当性は得にくいということになります。それで3-4年前から、ミラノでシャツを買うようになりました。しかし、未だオリジナルでも、襟を交換してくれるところはありません。正確に言うとないわけではないのですが、「襟を作って直すと、新しいシャツを買うのと同じくらいコストがかかるから、そんなのやめなよ」と言うシャツ屋が多く、仕方無しに、使い捨て文化に染まることになりました。

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が、シャツをたたんだときの皺のより方などをみると、やはりトリノのお店のもののほうが良いのです。無駄な皺がよりません。もちろんミラノにも沢山シャツ屋はありますから、トリノと同じレベルの同じ方式の店もあるのでしょうが、それを探し歩くほどの暇もないし、人に聞き歩くほどシャツに熱心になりません。そうして、この3-4年が過ぎました。しかしながら、ミラノのモンテナポレオーネ通りにある刃物専門店ロレンツィのマウロ・ロレンツィ氏から彼の店の哲学を聞くうちに、ぼくのシャツに対する妥協が恥ずかしくなってきました。ある有名なファッションデザイナーが「ぼくのシャツを襟を交換しながら長く着てくれているのを見るのは、とても幸せだ」と語っていたことが思い出されました。

ロレンツィのお店については、「下坪裕司さんとのおしゃべり」で話題にしました。

見た目のインパクトが強くなくても、それぞれがとっても高品質。決して安くはないけど、がんばれば手が届かないわけじゃない、そういうモノが揃っている 店がいいですね。世界中のいいものがあり、でもオリジナルがある・・・ミラノのモンテナポレオーネ通りにある刃物のロレンツィ(http://www.lorenzi.it/)が理想の商売ですね。どの店員も質が高く深い知識があってね。それで、コレというものを、世界中の人がそれを目指して買いに来る。

http://milano.metrocs.jp/archives/685

そこで、ぼくはロレンツィの経営者と雑談してきたわけです。実に堅実な考え方をしており、それが逆に刺激的でした。今年1月に80周年の記念パーティを開催したようですが、その彼にぼくは「貴方の現状に対する不満は何ですか?」と聞きました。「えっ、そんな質問をのっけからしてくるなんて初めての経験だなぁ。私的なレベル?それともビジネス?」と聞き返してきたので、ぼくは「両方」と答え、約2時間に及ぶ雑談がはじまりました。

何回かに渡って、このことについて書いていきます。

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Category さまざまなデザイン, ミラノサローネ2009 | Author 安西 洋之