ミラノサローネ 2009(16)-日本文化の発信
Date:09/3/11
茂木健一郎氏の「伝えたい日本」というトークの記録を読んでいて、意図することを心情的には分かるけど、これには解説を加えないといけないのではないかと思いました。少々引用しながら、ぼくのコメントを書いていきます。注意いただきたいのは、これは茂木氏への批判ではありません。効率よく日本文化を発信するための共同作業です。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/127
要するに、ある何かについての情報をいくら集めても、誰かが生きているという生き生きとした感じというのは絶対に再現できないんですよ。
私は従来の日本論というのはそのようになっていたという感じがするんです。雑誌などで行われてきた従来の日本の特集というのは、何か残骸となった ような日本です。日本を語ることは、海外向けのお土産みたいに、富士山や芸者をカタログ化することではないって言いたくなります。
リアリティが重要であることを語っています。いくら勉強しても、ちっともヨーロッパ文化が抽象的にしか見えない。そういう経験を積んだ人なら、よく分かる話です。ただ、ここで一つ指摘しておきたいのは、この残骸は「ステレオタイプ」という言葉に置き換えられると思いますが、ある理解の出発点として、そのステレオタイプから行くしかなく、それはそれでステレオタイプである何らかの理由があったのであると考えるのが妥当だと思います。しかし、その理由を深く考える必要はありません。時間の無駄です。そのステレオタイプを自分なりに修正していくことがより大事です。
たとえば、食文化のひとつである「おまかせ」。これはすばらしい文化です。飲み屋さんに入って、お客さんが「まかせるよ」と主人にひとこと言えば、 主人はその客の年齢や好みなどを考慮しつつ、料理を出していくわけです。こうしたサービスは、日本独特のものであると思います。
これが欧米であれば、イニシアティブは客にある。ホテルもレストランも、客が何かを要求しないと何もサービスは受けられません。ところが日本の場 合には、客が望んでいるであろうことを想像し、先回りしてサービスを提供する文化をもっているのです。これは、日本流「おもてなし」の美学であると言ってもよいでしょう。
また店の側に立ってみても、「おまかせ」文化は非常に合理的なものです。メニュー方式であれば、メニューに掲載されている料理はすべて出せるように準備し ておかなくてはなりません。そうすれば、食材を無駄にすることになるかもしれない。しかしこれが「おまかせ」料理であれば、無駄がなくなります。
最近、盛んに「おもてなし」という表現で流通しています。日本料理屋の「おまかせ」に関する上記の説明は、日本のホスピタリティを表現したいのでしょうが、通じにくい内容です。まず、前提を述べれば、これは日本独自ではなく、イタリアにもある方法です。これは店側にとって合理的ですが、お客さんの年齢や好みをより尊重するならば、このような合理性は成立しません。「おまかせ」は言ってみれば店側の押し付けになるのです。客サイドに立つならば、多くの選択肢が食材として用意されていたほうが良いはずです。こういうような、なんとなく日本風の美として紹介されがちなエピソードやテーマはよく吟味するべきです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/265
もちろんこの「和」の精神がオールマイティーになるわけではありません。どんな文化にもいい面と悪い側面があるものです。日本人の「和」の文化にしても、 逆に言えば突出した「個」が出にくいというネガティブな側面もありますし、意見集約に時間がかかるという欠点もある。しかし、自分たちの文化を眺める場合 には、そのいい面と悪い面を冷静に把握する必要がありますから、それを踏まえた上で、世界に自国の文化を発信していくことが大事です。日本文化の欠点を冷 静に把握しつつ、いい面を積極的にアピールしていくこと。それがこれからの社会には必要だと考えます。
文化の良い側面と悪い側面、これはあくまでも他の文化との相対的関係あるいは相性によって浮き彫りにされてくるものでしょう。ですから、上記は順序が逆です。冷静に自文化を眺めても、その悪い良いは閉じた世界の話です。発信する相手の文化を知って、自分の文化の良い側面あるいは売りの項目が自ずと見えてくるのです。これは、日本が雑種文化であり、多くの外来文化を受容してきたという点がアドバンテージになります。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/268
この小さな国のなかには沖縄のような南国があり、北海道のような、広大な大自然に恵まれたところがある。これほどバラエティーに富んだ環境をもつ国は他に はなかなかないでしょう。そして京都や奈良には古の景観が残されている。そういう日本の素晴らしさを再認識することが大事です。日本国内に目を向けて、 「日本とはこんなにも素晴らしい国なんだ」と国民一人一人が本気で感じること。そしてそれを世界の人たちに向けて発信することができれば、「日本ブラン ド」が世界のなかで確立できるでしょう。
日本の良さや強さを認識するのは大事です。それがブランドの力になるでしょう。自信をもつことも大切です。ただ、発信は、相手があっての発信です。空に向って叫ぶわけじゃないのです。「思い」も重要ですが、「思い」だけでブランドを作れません。双方向のコミュニケーションあってのブランドです。どういう表現言語を使用するか。これをよく検討しないといけません。







